「 江戸糸あやつり人形 」 南米公演

 MITSURU KAMIJO EDO MARIONETTE GROUP  

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2000年6/16〜24 

 ブラジルパラグアイアルゼンチン「総括」 wrote : 上條 充



  06/16-18  サンパウロ

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 6/16 10:00  憩の園 (特別養護老人ホーム) 公演
 望郷の念を強く持ちながら、日本に戻ることの出来ない高齢になられた日系一世の
 方々への慰問がしたく、この公演が企画された。

 17:00 サンパウロ市文化センター前 大道芸
 サンバウロ大学日本文化研究所での公演が職員のストで中止となり、基金サンパウ
 ロ事務局の計らいにより、急遽この場での大道芸が決定。立ち止まる方が予想以上
 に多く、評判も良かった。

 20:30 北海道交流センター 公演
 少しでも多くの方に見ていただきたく、宿泊場所のここでも公演を行う。
 急な申し入れにも関わらず、30名程の方が集まった。


サンパウロ市文化センター前 大道芸 (6/16)


 6/17 13:00 リベルダーデ広場 大道芸
 広く一般のブラジル人にも見てもらうため、大道芸を企画。日本人街の入り口に当
 たるこの広場を選ぶ。2-300人程の日系の方々が私達の到着を待っておられた。
 2回目の公演中に強風の為、中止せざるをえなくなった。

 16:00 文協記念講堂 公演
 設備の整った劇場での公演。南米公演中、はじめて「かみなり」を演ずる。ポルト
 ガル語を交えての芝居に、訪れた方は喜ばれた様子。人形の説明は日本語で行う。

 その夜、基金主催の夕食会において梅宮所長より「結論を出すには早いけれども、
 大道芸や公演を見て今回は成功だったと思う。もっと積極的に海外に出て、広く見
 せていって欲しい」との激励を頂いた。

リベルダーデ広場 大道芸 (6/17)

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 6/18 9:00 子供の園 公演
 サンパウロ社会福祉施設のひとつ。日系人に限らない精神薄弱児・者の施設。
 「かっぽれ」「かみなり」「獅子舞」を演じ、入園者に非常に喜ばれた。先生方も
 その反応に驚き、感謝された。

 14:00 イブラプェーラ公園 大道芸
 東京では考えられないほど広大な公園だった為、文協が市より許可を取り日系紙に
 て宣伝するも「何処でやるのか判らない」等苦情をいわれた。
 「かみなり」を含めたプログラムを予定していたが、吉川氏(役者)の体調不良によ
 り人形劇のみの公演に変更した。



イブラプェーラ公園 大道芸 (6/18)

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  06/19-20  リオデジャネイロ

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 6/19 移動日
 6/20 13:00 カリオカ広場 大道芸
 イバネマ海岸やコパカパーナ海岸でやると観光客も多いといわれたが、平日という
 こともあり、人通りの多いこの場所で公演を行った。
 日系人は全くいなかった。12時-14時までが昼休みで、かなりの反応があったが、
 投げ銭用のザルには2回公演を通して1銭も入らず。ストリートチルドレンが何度も
 ザルを覗き込んでいた。

 19:30 リオ日系協会 公演
 リオの日系人は二世以後と聞く。会場に集まられた方々を見ると、サンパウロとは
 異なる雰囲気を感じた。平日の夜ということで心配していたが、100人程がご覧に
 なった。
 日本総領事館から瀬川首席領事がお見えになる。

カリオカ広場 大道芸 (6/20)

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  06/21  イグアス

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 6/21 19:00 イグアス日本人会公演
 イグアス移住地に関係のある方から、日本文化の紹介が少ないので是非来てほしい
 との依頼を受ける。政情の不安から反対する声もあったが、喜んでもらえるなら、
 と、行くことにする。
 ここは二世の人も日本語を話すので「かみなり」も人形解説も日本語で通す。ただ
 この日から急に冷え込んだせいで、お年寄りの姿が少なかったのが残念だった。
 学校で案内があったため子供達が多く集まり、寒い中を一生懸命見ていた。

 


  06/22-24  ブエノスアイレス

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 6/22 移動日
 6/23 10:00 11:45 14:00 日亜学院 公演
 この学校は、バイリンガルスクールとして日本文化の紹介に積極的で、高学年、中
 学年、小学年向けに計3回公演を行う。
 日本語がわかるということだったが、人形の解説は通訳を交えて行った。各学年と
 も熱心に見てくれて、この時見た子供が、翌日の公演にお母さんを連れて来てくれ
 たことが嬉しかった。

 20:30 亜日文化財団日本庭園 公演
 ブエノスアイレスでは中心となる公演である。
 ブラジルではポルトガル語版の「かみなり」が好評だったのを受け、急遽スペイン
 語を取り入れることに。なんとか間に合い、たいへん好評だった。
 木島大使ご夫妻もご覧下さり、お褒め頂いた。

日亜学院 公演 (6/23)

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 6/24 10:30 アルゼンチン人形劇博物館 公演・交流会
 ここの主宰者サラー・ビアンキ氏(Sarah Bianchi) はアルゼンチンにおける人形劇
 の第一人者とのこと。博物館には日本の人形に関する資料が乏しく、交流を持つこ
 とは意義深いと思われた。
 公演には、ブエノスアイレスを中心とする人形劇関係者が30名ほど集まった。
 「かみなり」も見たがっていたが、会場が狭すぎて無理だった。人形の踊りを解説
 したが、充分満足してもらえたと思う。

 14:00 ベルグラノ広場 大道芸
 残念なことに、雨で中止せざるをえなくなった。
 会場には何人も待って下さった方が居たと聞いた。



アルゼンチン人形劇博物館 交流会 (6/24)

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-- 総括 --

 wrote : 上條 充

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 今回の公演には二つの大きな目的がありました。

  (a) 各国の文化交流
  (b) 日系人の社会福祉施設への慰問

 そして私達には以下のように二つの小さい実験的な目的がありました。

  (c) 大衆レベルでま文化交流---大道芸の推進
  (d) 狂言を基にした芝居「かみなり」が、同時通訳なしでどこまで伝えられるか

■ 現地での反響

 私達の人形は、行く先々で皆様に歓ばれました。
 公演が終了してお客様がお帰りになる時、「日本では幸せをもたらす」と説明してお客様の頭をお一人づつ獅子で噛んでお見送りしていましたが、日系人に関わらずほとんどの方が嬉しそうに頭をさげて下さいました。
 また各地を通して日系一世の方から四世の方までお会いしましたが、反応に世代の差は全くありませんでした。
 リオ日系協会の元会長からの言葉がこの公演を象徴していると思います。

「たかが人形と思ってきましたが、こんなに素晴らしいとは思いませんでした」


■ 成果と意義

 今回の公演は、なかなか他の人の行かないところ、やらない所での公演をしたということに意義があったと思います。そして行った先々で皆が心待ちにしていました。待っている人がいるんだと分かったことが、私達にとって大きな成果だったと思います。機会があるならば何度でも行ってお見せしたいと思います。
 ただ、4つの目的に対しては少しづつ課題が残ったと思います。

(a) 各国との文化交流

 僅か9泊10日で、3カ国4都市そして大道芸も含めて20ステージ、推定2000人程の方がご覧になったと思います。国際親善としう意味においては、よくやったほうかも知れません。また、各地の日本人会の方々が積極的に宣伝を行って下さったので、人形劇関係の方と予想外に会うことが出来ました。
 ただ、演劇関係の方と交流することが全く出来ませんでした。
 演出の和田喜夫は日本演出者協会の理事を務めていることから、現地で演劇関係者との接触をかなり模索しましたが、情報すらなかなか手に入りませんでした。余りに忙しく時間が無かったことが大きな理由ですが、もう一つには世界共通の人形劇と演劇との関係があるように思われます。
 かつて日本の人形芝居は、歌舞伎などの演劇とお互いに刺激しあう関係にあったと思います。が、現在においては皆無のようです。それは日本のみに限らず今回の南米公演においてもとのような感じを受けました。
 サンパウロ大学でのワークショップが行なえていれば、また違った状況が見えていたかも知れません。中止になったのは返す返すも残念でした。

(b) 日系人の社会福祉施設への慰問

 公演をお見せするだけではなく、ご覧になられた方々と公演後の交流ができれば良かったと思います。
 憩の園では入園されている方々が何か話した気に集まってこられたのに、次への移動のたる車に飛び乗らざるをえなかったのが、心残りでなりません。
 リベルダーデ広場での大道芸は、その3時間後には文協講堂(広場のすぐそば)での公演が控えているにも関わらず、多くの方が待っていました。この事実はブラジルにおける日系人社会の現状を現しているのかもしれません。2回目の途中で風邪が強くなり公演を中止せざるをえなくなったとき、ご覧になっていた方々に文協講堂での公演を勧めましたが、結局どなたもいらっしゃいませんでした。大道芸を最後までお見せ出来なかったことが残念です。
 イグアスの移住地では、夜1回の公演ということでお年寄りが少なかったことと、公演後の交流が充分に出来なかったことが悔やまれます。是非、もう一度伺いたいと思います。

(c) 大衆レベルでの文化交流---大道芸の推進

 大道芸にリスクはつきものです。天候は勿論のこと、国により大道芸に対する状況が全く異なります。今回私達の世話をして下さった方々は、場所の選定・市への許可申請などいろいろご苦労くださいました。
 出発前、治安の悪さから大道芸への不安は相当のものがありましたが、現地に行ってみるとその方々のお陰で何事もなく終えることが出来ました。

(d) 「かみなり」かどこまで伝わるか

 台詞に意味や感情を込めて言うのは当たり前ですが、その他に動きや方向性、距離感を持たせなければなりません。そこに肉体の動きが加われば、日本語で表現しても外国人に充分伝えられるのではないか。これが、基金へ申請した時に考えていたことでした。
 然し改めて本を読み返してみると、台詞に頼って説明しているところが随所にあり、芝居全体は何となくわかっても細かなところまで伝わりづらいことに気付きました。翻訳して下さった方々は、カタコトのポルトガル語や幼児を叱ったりあやしたりする日常語を巧みに取り入れて下さり、これが実に大成功でした。ブエノスアイレスに着いて急遽スペイン語に直したのは、当然のことです。

■ まとめ

 ブエノスアイレスで出逢ったセントロ日系の若い人たちは三世、四世になるそうですが、自分達の中にあるアルゼンチン人としてのものと日本人としてのものを融合して、そこから新しい文化を創出できないかと考えています。だから私達の意識や取り組み方にかなり興味を抱いたようです。随分突っ込んだ質問を受けました。
 彼等は日本の文化を見たい、知りたいと強く思っていますが、ブラジルまで来てもアルゼンチンまで来ないことを残念がっています。アルゼンチンまで来てほしいと切実に訴えていました。
 イグアス移住地でもやはり来てほしいと言っていました。近くにいくつか移住地があって、そこにも行ってほしいと言われました。
 今回各地を通して日系人の一世から四世まで出逢い、変な言い方かも知れませんが彼等がだんだん外国人になっていく様を見たような気がします。そして三世・四世になって逆に日本人としてのアイデンティティを求めています。・・・それを受け止めるのは、誰か。
 私達はささやかながら彼等と関わり、少しだけ刺激を残しました。しかしこういうことには継続が必要です。地球の裏側の魅力的な人々と少しでも長く継がっていければと思います。




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  「江戸糸あやつり人形」南米公演 6/14-25

  代表 上條 充   (人形遣い)
     和田 喜夫  (演出)
     吉川 進   (役者)
     福田 久美子 (人形遣い)
     宮崎 信行  (舞台監督)


  問い合わせは TEL & FAX 03-3300-5788 (上條・福田)
  又は、WEB管理人宛てにメールを下さい。
 --yana@lemon.plala.or.jp (YANA+CO2works)

 「江戸糸あやつり人形」南米公演WEBレポートは、上條さんから頂いた資料に
  基づき、YANA+CO2worksが製作したものです。
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