パレスチナ公演レポート

2001 04/09〜04/18--wrote : 上條 充--


 私達は、全く状況の異なる二つの海外公演に出掛けることになりました。
 一つは日系人慰問を中心とした南米3ケ国での公演。そしてもう一つは、民族・宗教の対立のシンボルとしての動向が常に世界から注目されているパレスチナでの人形劇フェスティバルへの参加です。

 戦後、南米に渡っていかれた日系一世・二世の方々がかなり高齢になられています。望郷の念、日本を思う気持ちは、私達の想像をはるかに超える強いものだと聞きます。皆様のお元気なうちに人形を見て頂きたい、また二世・三世の方には日本の文化にこういうものがあるということを知って頂きたいと思いました。
 パレスチナでは日本国際ボランティアセンターが、昨年エルサレムに子供平和図書館を設立し、パレスチナの子供達への平和教育に力を注いでいます。その一環として日本文化の紹介を、ということで私達に話がありました。

 どちらも劇場だけにはこだわらず、南米では街角や公園で広く一般の市民と交流し、パレスチナでは砂漠のベドウィンや難民のキャンプ地でも公演する予定です。
 私達も異国の大地から何かを学べればと思います。
 そして最後に、皆様の応援をお願いします。

04/09

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 ハイファ (イスラエル)  


 ガレリアインターナショナル・ウーマンズディの催し

 ハイファ、テルアビブ、エルサレムなどの都市やその近郊から女性を中 心にアラブ人、ユダヤ人がほぼ同数集う。
 演目は「かっぽれ」「獅子舞」「かみなり」
 到着したその日が公園初日の上、ぶっつけ本番ということもあって多少緊張し固い芝居の出来となった。が、反応は違った。人形ということもあるのだろうが、子供達には勿論のこと、大人達も初めてとは思えないくらい素直に芝居の中に溶け込んでいるのである。
 嬉しい驚きであった。


 カルメル山自然公園にて
 入場者数 120名



04/10

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 ワディ・アブ・ヒンディ (パレスチナ) ベドウィン・キャンプ


 演目は「かっぽれ」「酔いどれ」「獅子舞」
 沙漠のでこぼこ道を車に揺られて着くと、15分後に始めてくれと言われる。
 出迎えてくれたシャイな子供達を見て、予定になかった「酔いどれ」を是非見せたくなり、時間を延長してもらう。案の定、子供達も先生もその場を離れようとしない。「かみなり」も見せたかった。
 海外公演の交渉で、私達の真意を伝えることの難しさを感じた。


 公演の後、ベツレヘム (パレスチナ) ベイト・ジブリン難民キャンプにて打ち合わせ。
 イスラエルの厳しい封鎖の為、チェックポイントの通過すら難しいと聞き公演が危ぶまれる。が、通過に問題もなく、人々も暖かい。公演を決定す。

 小学校の校庭にて
 入場者数 90名



04/11

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 ヤッフォ (イスラエル)


 演目は全演目 (「かっぽれ」「酔いどれ」「獅子舞」
 
バーカーセンターとは子供のためのカルチャーセンターのようなところ。
 ヤッフォ周辺のアラブの子が中心。また、9日の評判を聞いて、ユダヤ人の演劇関係者も何人か来る。
「かみなり」の最後、終わり切らぬうちに司会者が出てきてうやむやになってしまう。この司会者は9日にも司会をして芝居を見ているにも関わらず、である。個人の問題か、それともこの国の文化の状態か、なんとも後味が悪かった。

 その後センター内にてワークショップ「人形の解説」
 人形の説明を求められ、打ち合わせの上アラビア語に通訳してもらったのだが、それでも通訳に手間取り、うまく伝えることが出来なかった。
(参加30人)

 バーカーセンター前広場にて
 入場者数 90名



04/12

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 マジダ・ル=クルム村 (イスラエル・アラブ)


 演目は全部を予定していたが、その場で「かっぽれ」「獅子舞」「かみなり」に変更。
 
開演11時と聞いていたので10時に到着、子供達の握手攻めに迎えられる。ところが校庭は別の予定が入っているという。教室は停電中。屋外球技場に決め準備に入ると校庭には生徒が並んでいる。すぐに始められないかと言われる。衣装も着ておらず無理である。なんとか11時半には終えるようにと。学校は10時開演と聞いていたそうだ。演目を減らし丁度に終える。

 小学校の校庭にて
 入場者数 140名



 同地 バーカーセンター


 演目は「かっぽれ」「酔いどれ」「獅子舞」と、ワークショップ。
 小学校で見られなかった人たちが集まるので、人形を遣ってほしいと言われる。ワークショップではまず子供たちにかっぽれの人形を持ってもらった方がより興味を持ってもらえると考えたからだが、正解だった。蝶も遣ってもらったが、これは大変だった。すぐに絡んでしまうからだ。
 糸あやつりの難しさと楽しさを感じてもらえたと思う。


 入場者数 90名



04/13

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 ナザレ (イスラエル・アラブ) バーカーセンター


 演目は全てとワークショップ。
 
14時から舞台のセッティングを始めるも、客席をどう取るかで現地スタッフと意見が分かれる。私の案では人が多いと入らないという。彼の案では舞台の構造を無視することになる。結局私の案になるが、大いに時間をロスしてしまう。
「かみなり」の時、子供達が人形や役者にちょっかいを出して、ちょっとやりづらかった。

 ワークショップでは、子供達にかっぽれの人形や蝶を遣ってもらった。


 入場者数 50名



04/14

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 マジダ・ル=シャムス村 (ゴラン高原 シリア籍アラブ)


 演目は「かっぽれ」「酔いどれ」「獅子舞」
 
人口13,000人の村のすべての子供達が集まったかと思われるほど入る。ただでさえ声を出して反応するところに狭くて窮屈、見づらい、そして350人も集まればうるさいばかりである。が、皆んな真剣に見る。アラビア語が入っていたのか分かりやすかったと子供達が話していたそうである。

 図書館ホールにて
 入場者数 350名



04/15

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 ピースライブラリー (エルサレム旧市街)


 演目は「かっぽれ」「酔いどれ」「黒髪」「獅子舞」
 この日はパレスチナがゼネストを構えていた。観客は集まらない上封鎖が厳しく移動に時間がかかるかもしれない。前日夜には中止を考えていた。が、朝になってエルサレムから、問い合わせが多いので早く来てほしいと連絡が入る。
 ゼネストは行われたが町は落ち着いていて、人はよく集まった。


 入場者数 70名



04/16

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 パレスチナ・ナショナルシアター 中ホール (東エルサレム)


 演目は全部。
 日程変更は9日。前日夜に打ち合わせ、仕込みを予定していたがゼネストのため出来なかった。朝8時に入る。会場はキャパ80人の小ホールを予定していたが、当日になってキャパ350人の中ホールに変更される。なかなか見易い会場である。どれくらいの人が見に来るのか尋ねたが、前日の新聞に広告を載せたもののゼネストで呼んでないだろう、どれくらい来るのかわからないと言う。なんとなく心許ないところ、よく入ったと思う。


 入場者数 170名



 アブ・ディース (パレスチナ)


 演目は全部
 アンナハダ・チャリタブル・ソサエティという地域の文化センターのようなところ。
 集会所・幼稚園・カルチャーセンターのような機能を合わせ持つ。スウェーデンの援助により、パソコンを10数台備えていた。子供が中心であったが、大人が覗き、観客として増えていった。
 会場に向かう時、自治政府の建築中の建物の前でデモがあって、路上にタイヤがひとつ燃え上がっていたがそれだけで、町は実に穏やかであった。



 入場者数 130名



04/17

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 ファンディ オリーブ山クラブ (東エルサレム)


 演目は「かっぽれ」「獅子舞」「かみなり」
 私達の他、マジックショウのバルーンショウの芸人が出演。このように何組かの芸人が出演するが、ファンディだそうだ。事前の説明がなくて野外を想像していたが、カルチャーセンターの中だった。小さな簡易舞台はあったが、「かみなり」には小さすぎた。
 400人なら大丈夫だろうと大道芸のようにぐるりとまわりを取り囲むように座ってもらうことにする。しかし泉が湧くように次々と入って来た子供達を見て、これでは見えないだろうと思うが、どうしようもない。人形を遣い始めると子供達がよく見ようと、波のように揺れる。後ろの子に押されて、前に座っている子が舞台に乗り、舞台がどんどん狭くなっていく。挙げ句に取っ組み合いの喧嘩が起こる。演目の変わり目に一度舞台を広げるが、すぐに狭まる。
 「かみなり」が始まると、子供達は興奮し喧噪は一段と激しくなる。と、急に静かになった。現地のスタッフが子供達を追い散らした瞬間だった。茫然と私達。それでも、100人ほどの子供達か取り囲んでいた。
 見せたい気持ちが強くても、見せられないことがある。こんな経験初めてであった。




 入場者数 600名



 ベイト・ジブリン難民キャンプ (パレスチナ)


 演目は「かっぽれ」「酔いどれ」「獅子舞」「かみなり」
 10日の打ち合せでは15時半から路上で大道芸をすることにしていたが、現地スタッフから「かみなり」を見せてほしいと言われ、会場をカルチャーセンターに移す。この日は先日と異なり、チェックポイントで返されてします。抜け道も閉鎖されていて、もう一本別の道をいく。30分で着くところを、1時間45分もかかってしまう。しかし皆の反応を見て、苦労した甲斐があったと思った。


 入場者数 110名



04/18

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 ラマッラー (パレスチナ)


 演目は全部。
 西岸地区の中でも、最も封鎖の厳しいこの街での公演は、不可能と考えていた。ところが3日前になって急に封鎖が緩くなり、可能になる。しかしその日によって状況が違うのでなるべく荷物を減らして行くことにする。何の問題もなく入れる。この日の公演は今回のツアーで初めて大人の観客が多く、半数がそうだった。衝突が続いているにも関わらず人々は落ち着き、私達の芝居を充分楽しみ、いい公演が出来たと思う。

 バラドニ・カルチャーセンター
 入場者数 120名



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